睡眠時にはノドの周囲の筋肉は緊張が弛みますので、ノドの空気の通り道(気道)としての空間を保ちにくくなります。また、特に仰臥位では舌が後方へ落ち込みやすく、ノドを狭くする傾向にあります。それでも元々ノドや鼻に問題のない場合に睡眠時の呼吸が正常にできます。しかし、のノドや鼻に空気の通路を狭くする状態があると、通常の呼吸では必要な換気が妨げられ、持続するいびきや無呼吸が生じることになります。したがって、いびきは睡眠呼吸障害のよい指標になります。睡眠時無呼吸症候群の潜在患者は人口の2~3%と言われています。
このような場合は危険のサインです
大きないびきをかく/夜間の呼吸停止/夜中に何度も目が覚める/起床時の頭痛やだるさ/日中いつも眠い/運転中に居眠りをしたり、居眠りをしそうになることがよくある
1肥満
肥満は重要な要因です。肥満があるとノドや舌にも脂肪が多くなり、気道が狭くなります。
2扁桃肥大
扁桃は咽頭(ノド)の左右両側から中央に向けて張り出しています。したがって、扁桃が肥大すると、その部分で気道が狭くなります。小児の睡眠呼吸障害の場合は、扁桃やアデノイド肥大によるものがほとんどです。
3鼻詰まりの影響
アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎、これに伴う鼻ポリープ、あるいは鼻中隔弯曲症(両方の鼻腔に間の壁の弯曲)などがあると鼻閉の原因になり、睡眠呼吸障害につながることがあります。
4年齢
年齢とともにノドの周囲の筋肉の緊張が低下して、気道が狭くなることがあります。
5小顎症
小顎症(下顎が小さい)の場合には舌が後方に落ち込みやすくなり、気道を狭くします。
睡眠中に充分に熟睡できず、苦しくて夜間覚醒する(睡眠の分断)ことが多くなります。そうすると、朝起床時に熟睡感が得られず、まだ眠気が強くすっきり起きることができない。あるいは、昼間にすぐ眠ってしまう(昼間の傾眠)、などの症状が現れます。ひどくなると車の運転中に居眠りをして事故を起こしたという報告もあります。
これを放置すると、下に示すような全身的に、また社会的にいろいろな問題が生じることが知られています。
●全身的影響
循環器疾患/脳血管障害/生活習慣病の合併(高血圧、糖尿病、肥満など)/うつ傾向など
●社会的影響
いびきによる周囲への迷惑/仕事の効率が悪くなる/QOLの低下/傾眠による交通事故や産業事故など
(1)常に大きないびきをかく。
(2)睡眠中の無呼吸を指摘される。
(3)昼間に眠気が強い。
などの症状があると睡眠時無呼吸症候群を疑います。
まず、上記のような症状で睡眠時無呼吸症候群を疑うと、耳鼻科では鼻や咽頭、喉頭に原因となる異常がないか診察します。次はどの程度の無呼吸があるのかを検査することになります。検査は器械を付けて寝てもらい、そのデータを解析して無呼吸低呼吸指数(AHI)を算出します。検査自体は器械を付けて寝るだけですので簡単なものです。当院では携帯型の器械をお貸しして、自宅で検査を行っていただきます。
AHIは10秒以上の無呼吸低呼吸が1時間に何回あるかという数字です。AHIが5以上の場合に睡眠時無呼吸症候群と診断し、15以上になると何らかの治療を要する場合が多くなります。
1手術
扁桃肥大やアデノイド肥大など明らかに気道を狭くしている病変がある場合には、手術を行うことによって改善することが期待できます。
2口腔内装置
下顎にマウスピースを装着することで、下顎とともに舌を前方に引き出して気道を保つものです。主に軽度の睡眠時無呼吸症候群に適応があります。
3経鼻持続陽圧呼吸(CPAP)
CPAPは鼻にマスクをつけて、そのマスクを通して空気を送って気道の開大をはかるものです。欧米では治療の第一選択で、実際には気道を狭くする明らかな病変はなく、CPAPを使用する場合が最も多いと言えます。
・周囲の人からいびきを指摘されたことがある。
・夜中に何度も目が覚める。
・朝に目が覚めるとノドが渇いている。
・十分に眠ったはずなのに朝起きても疲れがとれない。
・日中の眠気がひどい。
・下あごが小さい。
・アレルギー性鼻炎などの鼻の病気や、アデノイド、扁桃肥大などノドの病気がある。
上記のような症状、状態があると睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
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